小網代の森、そこに人は原風景を見るのではないでしょうか。森へ一歩足を踏み入れると日常と言うものが消えてなくなるように感じます。鬱蒼として、ところどころに深く日が差し込み木々や草花を照らし出します。
森の中央を流れる浦の川にそった遊歩道を歩くと湿地帯が広がる場所に、そこで生まれて初めて自生するハンゲショウの花を見た時の感激は今でも忘れられません。
丁度、夏至を過ぎたころ梅雨の晴れ間に訪れることができたので、白い花と白く変化した葉をタイミング良く干渉することができました。
葉先だけを残し白く変化した葉に、自然の営みの不思議と驚きでしばらく動くことができませんでした。ざわざわと森を通る風の音と群生する半夏生の花が今でも鮮明に思い出すことができます。
半夏生(ハンゲショウ)の基本情報
- 分類:ドクダミ科ハンゲショウ属 多年性落葉草木植物
- 学名:Saururus chinensis
- 和名:半夏生・半化粧(ハンゲショウ)、片白草(カタシロクサ・カタシロソウ)
- 別名:三白草(サンパクソウ・ミツジログサ)
- 英名:Chinese Lizard’s Tail
- 原産地:東アジア、亜熱帯性湿地
- 開花時期:6月〜8月
- 花色:白
- 誕生花:7月1日
半夏生(ハンゲショウ)の学名
学名のSaururusはギリシャ語のSauros(トカゲ)+oura(尾)が語源、トカゲの尾の様に穂状の花をつけるから。Chinensisは支那(中国)のと言う意味。
半夏生(ハンゲショウ)の和名・別名
和名のハンゲショウの二種類の漢字(半夏生・半化粧)は、二十四節気・ご節句の他に季節の移り変わりを的確につかむために設けられた特別な暦七十二候の一つ、半夏生のころに咲く花と言う意味「半夏生」と、ハンゲショウの花が咲く頃にその葉が白粉をはたいたように半分白くなるから「半化粧」とも両方使われています。
片白草(カタシロクサ/カタシロソウ)は古い呼び名で、花の咲く頃、葉も表面は白く色を変えるけれど裏側は色が変わらず淡い緑の為(片白)と呼ばれたことからきています。
別名の三白草(サンパクソウ・ミツジログサ)は、漢名の日本語読みで、現在もこの呼び方をする地域もあります。
半夏生(ハンゲショウ)の英名
英名(Chinese Lizard’s Tail)は学名の直訳、中国のトカゲのしっぽと言う意味で、やはりその花の形からきています。ただ、半夏生は日本の在来種であるため、HANGESYOUと伝えても良いでしょう。
半夏生(ハンゲショウ)の特徴
ハンゲショウは水辺の湿地帯に群生する多年性落葉草木植物。草丈は50~100cm、葉は互性で長さ5~15cmの卵形、基部が細くなりハート型の形状を作る。夏至を過ぎたころに10~15cmほどに穂状の花序を葉の付け根から伸ばす。
花序には花びらを持たず代わりに花のすぐ下に位置する葉が根元から白くなり花弁の役割をする、これはハンゲショウが虫媒花のため虫を寄せるために花を大きく見せるためと考えられている。
また、開花のころには同科のドクダミに似たような芳香を放つ。開花後は葉の色が元に戻ります。生薬の半夏と混同しやすいが、生薬の半夏はサトイモ科の植物の一種であるカラスビシャクの塊茎の事。
こちらも半夏生のころに花を咲かせるため、半夏と呼ばれる。
半夏生(ハンゲショウ)の原産地
日本本州以南・朝鮮半島・中国・フィリピンに分布。日のあたる湿地に、地下茎を広げ群生する。日本では近年、湿地の激減のため生育環境が整わず絶滅危惧種とされている。
開花時期
ハンゲショウの名の通りに七十二候の夏生のころに開花する。半夏生と雑節の一つで過去には夏至から11日目の事を言い、現在では天球上の黄径100度の点を太陽が通過する7月2日ころのことを言います。
実際は梅雨時の6月から8月頃まで、白い穂状の花びらを持たない花が咲きます。
7月1日の誕生花 ハンゲショウ
半夏生が7月2日ころになるので、その頃の誕生花になりました。水辺の湿地帯でありながら日が差し込む稀有な場所に咲く半夏生、7月1日はダイアナ元皇太子妃の誕生日でもあります。
ハンゲショウの花言葉
- 「内に秘めた情熱」
- 「内気」
など半夏生の姿をそのまま表現した花言葉ですね。
毒があるとの言伝えがあり、あまり明るい印象がないハンゲショウですが、実は開花時に摘んだ花を水で洗って陰干しにして煎じて服用すると、ドクダミと同じように利尿作用がありまたはれ物に効くそうです。
ただし民間療法なので詳しい方に教えて頂きながら服用しましょう。
ハンゲショウの花言葉まとめ
絶滅が危惧されるハンゲショウですが、鉢植え直植えどちらでも育てることができます。常に土が湿っている状態を保つことができれば、病害虫の心配はほとんどなく比較的育てやすい草花と言えます。暑い夏に涼風を送り込んでくれるハンゲショウ一度は育ててみたい花の一つです。
その花言葉は「秘められた情熱」「内気」。
余談ですが、半夏生のころは丁度、田植えを終える頃で「夏至のあと半夏生の前に」田植えはするものだそうです。(地域にもよる)半夏生の5日間は働くことを忌み、天から毒が降ってくるから井戸に蓋をして、この日に畑や林に入ってはいけないと言われます。
そして関西では稲がタコのように大地にしっかり根を張ることを願うことから蛸を食べる風習があります。
田植えあと、疲れた体を休めて、タウリンたっぷりの蛸を食べて病気にならないようにとの願いが込められた。日本人の知恵ともいえる習わしです。