レストランの前菜を飾る色とりどりのナスタチウムの鮮やかさとその花が食べられると聞いた時の驚きは記憶にまだ新しく、エディブル・フラワー(食用花)と言う言葉を聞いたこともない頃の話です。
年を重ね、大人になった今もお皿の上のその花を口に運ぶとき、あの「本当に食べて良いのだろうか、、」と恥ずかしながら同席の先輩に聞いた記憶が蘇りドキドキしてしまいます。
ナスタチウム(キンレンカ)の基本情報
- 分類:ノウゼンハレン科ノウゼンハレン属 一年草
- 学名:Tropaeolum majus L
- 和名:金蓮花(キンレンカ)
- 別名:凌霄葉蓮(ノウゼンハレン)
- 英名:Nasturtium
- 原産地:南アメリカ ペルー・コロンビア等、熱帯原産
(アンデス地方では農作物として栽培されている。) - 開花時期:4月下旬〜11月上旬
- 花色:オレンジ色・黄色・山吹色・赤色・朱色・桃色など
- 誕生花:4月6日、5月11日、6月18日、7月25日、9月6日
ナスタチウム(キンレンカ)の学名・和名・別名
学名のTropaeolumは、ギリシャ語のtropaion(トロフィー戦利品の意)からきている。中世の盾の様に見える円形の葉の形からその名が付いた。
また、学名の最後につくLは、命名者カール・フォン・リンネ(Carl von Linnè)の略記。
和名の金蓮花・別名の凌霄葉蓮共に、葉が蓮の葉に似ているから蓮の字が使われ、凌霄は、花がノウゼンカズラの花に似ているから付けられたと言われている。
英名のNasturtiumはアブラナ科の多年草のクレソンの学名と同じであるが、それはナスタチウムがクレソン同様に辛子のような風味があるからとされている説と、原種の香りが強かったため、おそらくその香りをかいだ人は鼻にしわを寄せたから。英名のNasturtiumはラテン語のnasus(鼻)tortus(曲がる)が語源と言う説がある。
ナスタチウム(キンレンカ)の特徴
原種はツル性の一年草、小ぶりなヒメキンレンカとの交雑で現在は矮性が主に流通している。草丈は20㎝前後のものから3メートル(つる性)のものまで多種。葉は蓮などに似て円形で中央付近に葉柄がつく。
葉の色は黄緑色・薄緑色など斑が入るものもある。花は左右対称、花弁は5枚。一重咲き・八重咲がある。花びらの付け根に向かって漏斗状に細長く距があり、そこに蜜が溜まる。
原産地では約80種類以上の草本があり、その歴史は古く、ヴィクトリア王朝時代のイギリスの庭園設計家ガートルード・ジーキルは好んでナスタチウムを使っていたと言われています。1878年に行われたパリ万博では30種類ものナスタチウムが植えられました。
何よりも手間がかからず育てやすく、たくさんの色とりどりの花で庭を埋め尽くしてくれる、そして食用としても鮮やかな花がお皿の上を賑やかに飾ってくれるナスタチウムを人々に愛してやまなかったのです。
かのトーマス・ジェファーソンも毎年庭にナスタチウム植えていて、亡くなる直前までその年に植えるナスタチウムの依頼の手紙を書いていたと言う逸話が残っております。
開花時期
4月下旬から11月上旬までと花期は長い。夏の暑さに弱く、春まきのものは、気温が25℃以上になってくるといったん枯れてしまいます。直まきにするときは、種をまく時期をずらすことで、開花の時期をずらすと長く判を楽しめます。
昨今、夏場の異常な気温の上昇で、直うえでは花が咲かない時期が長くなってしまうのは残念なことです。対策としてはハンギングやプランターなどに植えて真夏は風通しの良い日陰へ、寒くなってきたら日当たりの良い軒下へと移動することが花を長く楽しむポイントです。
花色
- オレンジ色
- 黄色
- 山吹色
- 赤色
- 朱色
- 桃色
ナスタチウムの花色は、金蓮花と呼ばれるように金色に見えるような暖色系の明るい色が多いのが特徴です。
育てやすく鮮やかな色とりどりの花を咲かすナスタチウムは、フランスの印象派を代表する画家クロード・モネが睡蓮の花を描き続けたジヴェルニーの庭にもたくさん植えられていたそうです。
モネの庭に咲いたナスタチウム、特別な響きを感じます。
ナスタチウム(キンレンカ)の誕生花〜春から秋へ〜
ナスタチウムは4月6日、5月11日、6月18日、7月25日、9月6日生まれの方の誕生花です。
花期が長いので春から秋の誕生花になったのですね。数年前6月生まれの友人の誕生日にパティシエの別の友人がケーキの上にナスタチウムを飾り付けて饗したこと
がありました。真っ白なクリームの上に散らされたナスタチウムはひときわ美しく、あの時の感動が今でも話題になります。
ナスタチウム(キンレンカ)の花言葉
- 「愛国心」
- 「困難に打ち勝つ」
- 「勝利」
- 「恋の火」
- 「忠誠心」
- 「光の導き」
ナスタチウムの学名の語源がギリシャ語のtropaion(トロフィー戦利品の意)からきていると書きましたが、花言葉もその葉を盾に花を血に染まった鎧に見立てて、敵に向かっていく騎士の愛国心・そして困難に打ち勝ち、国に勝利をもたらす花との意味が込められているようです。
ナスタチウムの花言葉まとめ
中南米原産のナスタチウムはその鮮やか花色と育てやすさで、ヨーロッパを中心に古くから愛されてきた花です。その歴史は1500年代のスペインの医者で植物収集家のニコラス・モルデスが、ペルーから帰ってきた人から譲り受けたナスタチウムの種を、ただその美しい姿を見たいがために育てたとの記述が残っているほどです。
美しいものへのあくなき探究心が中南米原産のナスタチウムをヨーロッパ全域へ広めました。その花を手に入れるには、どれほどの困難があった事でしょう。ナスタチウムの花言葉をもう一度繰り返してみると「愛国心」「困難に打ち勝つ」「勝利」「恋の火」「忠誠心」「光の導き」のすべての花言葉から、花を求めて未開の地を旅する収集家・冒険家の姿が浮かんでくるようではありませんか。
現在では、手軽に日本でも育てられるナスタチウムの花。嬉しいことに高知県安芸郡北川村にジヴェルニーのモネの庭を再現した北川村「モネの庭」マルモッタンが2000年に開園しました。
クロード・モネの庭を彩ったナスタチウムも植えられた「花の庭」、クロード・モネを知らなくても、ナスタチウム愛好家なら一度は訪れたい場所です。